【徹底解説】退職代行を利用すると懲戒解雇されてしまうのか?

【徹底解説】退職代行を利用すると懲戒解雇されてしまうか?

懲戒解雇リスクは、退職代行の利用を検討する場合の不安の一つ

「退職代行を利用して会社を辞めると、懲戒解雇されませんか」というご質問は、退職代行を利用されるかどうかお悩みの方から寄せられるよくあるご質問の一つです。

退職代行会社のホームページの「よくある質問」では、「懲戒解雇されることはない」と断言しているものもあります。しかし、詳しい理由の説明がないことが多く、これでは説得力がありません。

また、ネット上では、退職代行を利用したら、実際に懲戒解雇された事例もあるという話もあります。

そこで、今回は、「退職代行を利用したら懲戒解雇されてしまうのか?」というご質問に対して、徹底解説します。

弁護士による退職代行を利用した場合は、懲戒解雇のリスクは限りなく低い

退職代行サービスを提供している事業者は、大きく分けると、2種類です。

  1. 弁護士による退職代行
  2. (弁護士以外の)退職代行会社による退職代行

 

弁護士による退職代行を利用した場合は、懲戒解雇の理由にはなりません。よって、懲戒解雇されるリスクは限りなく低いといえます。

なぜなら、

 ①(正社員の)労働者が会社を辞める権利は、民法627条により法律上保障されている。

 ②労働者が弁護士に依頼して、自分の代理人として会社と交渉をしてもらうことは合法である。

という理由があるからです。

会社が従業員を懲戒解雇をする場合には、就業規則の懲戒解雇事由に該当する事実関係が必要です。民法で保障された従業員が退職する権利を、自分が依頼した代理人である弁護士が会社に伝えることは、完全に合法な行為です。従業員が合法な行為をしたことが、懲戒解雇の理由になることはありません。

よって、弁護士による退職代行を利用した場合に、懲戒解雇されるリスクは限りなく低いといえます。

万一、会社がそれでも懲戒解雇を「主張」してきた場合は、明らかに違法な主張ですので、そのような懲戒解雇は「無効」です。

 

退職代行会社による退職代行を利用した場合は、懲戒解雇されるリスクはある

退職代行会社による退職代行業者を利用した場合は、懲戒解雇されるリスクはあります。

なぜなら、弁護士ではない退職代行会社が、退職の申出をする際に、会社と交渉をしてしまうと、弁護士法に違反してしまう可能性(非弁行為)が高いからです。

つまり、
 退職代行が弁護士法に違反(非弁行為)
   →退職代行行為が無効(法律上有効な退職の申出がなされていない)
   →無断欠勤となり、懲戒解雇事由に該当

というロジックとなります。以下説明します。

まず、退職代行を使って、退職の申出をする際には、通常、このような事項について会社と交渉をすることが多いかと思います。

  1. 退職日をどうするか(民法627条の期間が経過するよりも早く辞めたい)
  2. 未消化の有給を取得したいが、会社が全部は認められない(=会社が時季変更権を主張)といっている

弁護士であれば、上記のような法律上の論点が関係する事項について、従業員の代理人として会社と交渉をすることは合法ですので、問題はありません。

しかし、弁護士ではない退職代行会社は、上記のような法律上の論点が関係する事項について、会社と「交渉」すると弁護士法72条に違反する違法行為(非弁行為)となってしまいます。

退職代行会社のホームページを見ると、「交渉はしません。伝言を伝えるだけです。」と書いてあることも多いです。

しかし、会社が「急に退職すると言われても納得できない」「会社を辞めるなら、有給取得は認めない」といって「反発」することは珍しいことではありません。この場合は、労働法と民法に基づく対応をするよう会社と「交渉」する必要があります。「伝言」だけでは埒があかない場合も多いかと思います。

退職代行会社が会社に連絡をした場合に、「伝言」しかしていないのであれば、従業員の方の権利を守ることは難しいかと思います。また、実際のところは、退職代行会社が、どこまでのことをやっているのか、やっていないのかは、依頼する側には分からないところではあります。

また、退職代行会社には、「即日退職」をうたっている会社も多いです。しかし、民法で認められた退職の権利は、退職の申出から、民法627条所定の期間が経過した後に退職ができるというものです。即日退職できる権利は民法上認められておりません。そうなると、即日退職をするためには、会社と「交渉」することが不可欠ですが、「交渉」してしまうと、弁護士法72条に違反することになります。

また、退職代行会社から連絡を受けた会社の立場では、「弁護士ではない退職代行会社が、本人に代わって、会社を今日辞めるとか、有給を取得したいという電話をしてきた。本人に連絡を取るなと言われているので、本人にも確認もとれない。法律では2週間前に予告すれば会社を辞められるということは聞いたことがあるが、即日退職できる権利が労働者にあるなんてことは聞いたことはない。また、いきなり会社を辞めると言われて、引継もせずに、有給は全部取りたいなんて、そんなことは認められない。」と思うこともあるでしょう。

このように会社が考えた場合、会社は、「弁護士ではない退職代行会社が何を言ってきても、代理人ではないので無効である。本人にも連絡がとれないのでなりすましかも知れない。」ということで、退職代行会社が「伝言」してきた退職の申出については「法律上無効なもの」として扱い、無断欠勤扱いする可能性があります。

会社の就業規則では、無断欠勤が一定日数続くと懲戒解雇事由とされていることが通常です。そうなると、退職代行業者を使って退職の申出をした場合に、会社が、無断欠勤を理由に懲戒解雇をするリスクはあることになります。

 

実際に懲戒解雇されるリスクはどの程度あるのか

弁護士による退職代行を利用した場合は、上記のとおり、合法な行為ですので、懲戒解雇の理由にはなりません。もちろん、無効な懲戒解雇であっても、懲戒解雇を主張する会社が全くないとはいえません。しかし、懲戒解雇された後に、裁判をすれば、ほぼ確実に敗訴する可能性のあることをする会社は、極めて少数派かと思います。違法な懲戒解雇をしたことが裁判所に認定されれば、慰謝料の支払を命じられることもありますので、なおさらです。

他方、(弁護士ではない)退職代行会社を利用した場合には、上記のとおり、弁護士法に違反する場合があり、また、無断欠勤扱いされてしまうと懲戒解雇の理由があることがあります。となると、懲戒解雇リスクは一定程度あることになります。

もちろん、会社を辞めるために退職代行を利用しているのですから、会社が懲戒解雇をしたとしても、会社を退職するという意味では同じです。ですので、退職代行会社を利用した場合に、弁護士法違反等の問題があったとしても、その点を会社が争ったとしても、会社を退職するという結論は変わりません。退職の理由が、自己都合退職か、懲戒解雇になるのかの違いにすぎません。

会社は営利企業ですので、経済的なメリットはないことは通常しません。ですので、退職代行会社による退職を認めて、懲戒解雇をしないという対応をとる会社が多数派ではあると思います。

他方、退職金制度があり、懲戒解雇の場合には、退職金を一部又は全部支給しないという内容の退職金規程があれば、懲戒解雇をすると会社にも経済的メリットがあります。この場合は、退職金の支払を減らす(なくす)ために、懲戒解雇をしてくる場合もありえるでしょう。

逆に、退職金規程もなく、懲戒解雇することについて経済合理性がないにもかかわらず、退職代行を利用してきた場合に懲戒解雇をしてくる会社は、嫌がらせ目的がある可能性があります。

そして、嫌がらせ目的で懲戒解雇をしてくる会社の場合は、将来の損害賠償請求の布石として、懲戒解雇を主張してくる可能性もあります。

そもそも、退職代行を利用している場合には、退職を申し出た場合の会社の対応について信頼感が持てない(退職を認めない等の「暴言」を言われる等)ことも多いかと思います。そういう会社の場合は、「嫌がらせ目的」での懲戒解雇をしてくる可能性は、普通の会社の場合よりも高いと思われます。

そうなると、会社に嫌がらせの「口実」を与えてしまうことは(弁護士ではない退職代行会社を利用して、弁護士法違反や無断欠勤主張を許す)、得策ではありません。

懲戒解雇された場合にはどうすればいいのか

懲戒解雇された場合ですが、まずは、内容を確認しましょう。

懲戒解雇は、2つのパターンがあります。

  1. 1ヶ月前予告の場合
  2. 即時解雇の場合

1ヶ月前予告の場合

1ヶ月前予告の場合は、懲戒解雇の通知を受けてから1ヶ月が経過しないと懲戒解雇の効力が生じません。ですので、懲戒解雇の効力が生じる前に、民法627条の期間が経過すれば、民法に基づく退職ができます。退職してしまえば、その後に、懲戒解雇の効力は生じることはありません。

弁護士による退職代行を利用している場合は、そもそも懲戒解雇の理由になりませんので、懲戒解雇の効力自体を争うこともできますし、上記のとおり、懲戒解雇の効力が生じる前に、民法627条に基づく期間が経過した後に退職することができます。

他方、退職代行会社を使って「即日退職」の「伝言」を伝えていた場合は、そもそも、当該「伝言」が退職日の交渉に該当するため、弁護士法72条に違反して無効とされてしまうと、そもそも民法627条に基づく、退職の申出をしていないことになりますので、話がややこしくなります。退職代行会社の手には負えなくなりますので、改めて、弁護士に依頼する必要があるかと思います。

 

即時解雇の場合

即時解雇の場合は、会社は、原則として、平均賃金30日分以上の解雇予告手当を従業員に支払う必要があります。

弁護士による退職代行を利用している場合は、そもそも懲戒解雇の理由になりませんので、懲戒解雇の効力自体を争うこともできます。また、会社が即時解雇をしてきた場合には、それを逆手にとって、「懲戒解雇を撤回しないなら、解雇予告手当を支払え」と会社に求めることもできます。

会社は、「嫌がらせ」目的で懲戒解雇(即時解雇)をしてきている可能性が高いわけですが、逆に、解雇予告手当の支払を請求されてしまうと、経済的にデメリットしかありませんので、懲戒解雇を撤回する可能性は高いでしょう。

また、解雇予告手の支払を受けたとしても、それは懲戒解雇が有効かどうかとは別の問題ですので、懲戒解雇の無効を求める訴訟をすることも可能です。

(注)あくまでも、弁護士に依頼して退職代行をしたことについて、会社が、懲戒解雇に該当すると主張してきた場合の対応です。懲戒解雇事由が他にある場合(ex 横領行為等)は、別の話になります。

 

他方、退職代行会社を使って「即日退職」の「伝言」を伝えていた場合ですが、ここまでの場面になると、弁護士ではない退職代行会社には手に負えないかと思います。

まとめ

以上をまとめると次のとおりです。

  1. 弁護士による退職代行を利用しても、懲戒解雇の理由にならないので、懲戒解雇のリスクは限りなく低い。
  2. 退職代行会社を利用した場合、弁護士法違反や無断欠勤扱いされると、懲戒解雇の理由ができてしまうため、懲戒解雇のリスクがある。しかし、現実の懲戒解雇のリスクは高くはない。
  3. 懲戒解雇を実際にされてしまった場合でも、弁護士による退職代行を利用していれば、懲戒解雇を撤回させることも可能。
  4. 懲戒解雇を実際にされてしまった場合、退職代行会社では対応できないので、結局、弁護士に依頼する必要がある。

となると、退職代行サービスの利用を検討されている社員の方からみれば、退職代行会社の方が、弁護士よりも、料金・費用が「格安」というのであれば、退職代行会社を利用するメリットもあるかと思います。

逆に、弁護士による退職代行サービスと退職代行会社による退職代行サービスの料金・費用が変わらないのであれば、弁護士の方が退職代行会社よりも「優れたサービス」を提供しているといえるのではないでしょうか。