【徹底解説】「退職代行」が注目される理由と退職代行業者の選び方

「退職代行」が注目される理由と選び方を解説

「退職代行」とは

「退職代行」とは、従業員(本人)に代わって、退職の申出と退職の手続を代行してくれるサービスです。

「退職代行」が注目されている

2018年夏頃から、「退職代行」が注目されはじめました。言葉の認知度も上がっています。

メディアでも頻繁に取り上げられるようになっています。例えば、「退職代行」については、NHKでも、2018年9月にニュースウォッチ9でで紹介されました。2018年12月には、クローズアップ現代+で、特集されることになっています。NHKのホームページでも関連する記事や動画が掲載されています。

ネット上でも、「退職代行」について、関心が高まっています。例えば、「退職代行」の検索回数を比較すると、1年前の100倍となっています(※)。twitterのトレンドでも、2018年夏以降で少なくとも3回入っています。

※googleで「退職代行」を検索した場合
2017年10月の月間平均検索ボリューム :「100~1000」
2018年10月の月間平均検索ボリューム :「1万~10万」

さらに、2018年11月頃から、退職代行業者がラジオCMを流すようになっています。もしかしたら、テレビCMが放映される日も遠くないかもしれません。

「退職代行」が注目されるには理由があった

「退職代行が注目されている」という話を聞くと、おそらく「退職することは自分で会社に言えばいい。どうしてお金をはらって第三者に頼むのか」という疑問があるかと思います。

しかし、「退職代行」が注目されるには理由がありました。

まず、人手不足を背景にして、「ブラック企業」が社会問題化しているということは、よく知られていることと思います。この「ブラック企業」の中には、会社を辞めさせてくれない会社が相当数あることがメディアの報道などからも分かっています。

 

また、労働者側からの退職(自己都合退職)に関する悩み・トラブルは、この約10年間、増加していました。

例えば、厚生労働省の労働局が実施している相談でも、自己都合退職に関する相談が増加しています。平成21年度では、解雇の相談件数は、自己都合退職の相談件数の約4.16倍も「多く」ありました。

しかし、毎年、自己都合退職の相談件数は増え続けました。

そして、平成29年度には、自己都合退職に関する相談件数は、解雇の相談件数よりも「逆転」して、多くなりました。具体的には、自己都合退職に関する相談件数は、解雇の相談件数よりも17%多くなっています。

自己都合退職の相談件数は、この10年で約2.4倍も増加して、年間約4万件前後にもなっています。

【出典】「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)の調査結果から作成

上記のグラフでも、解雇の相談件数が減少する一方、自己都合退職の相談件数が毎年増加していることが分かります。

 

「退職代行」が必要な人とは

「退職代行」が必要な人は、下記のような悩み・トラブルを抱えている方になるかと思います。

  • 上司の性格や職場の状況で、自分では退職することを言い出しづらい場合
  • 既に退職の申出をしたものの、会社が退職を認めてくれない場合
  • 退職する際に、会社が有休の取得を認めてくれない場合
  • セクハラ・パワハラや、残業代未払などのトラブルが発生している場合

 

「退職代行」を使うメリット・デメリット

メリット

上司の性格や職場の状況(人手不足など)で、退職の申出や、退職に関する条件交渉(退職日、有給取得など)を自分ですることは、精神的ストレスが高いことも多いでしょう。

退職代行を使った場合のメリットは、こういった退職の申出や、退職手続や交渉を代行業者にやってもらえることです。本人では言いにくいことでも(例えば、退職前に有給を消化すること)、第三者であれば権利行使をしやすいということはあるでしょう。

※ただし、弁護士でない退職代行業者は、会社と「交渉」をすると弁護士法72条に違反(非弁行為)する可能性があります。

デメリット

退職代行を使った場合のデメリットは、費用がかかることです。

自分で退職の申出をしたり、会社と交渉すれば費用はかかりません。代行業者を使うと、後述のとおり、3万~5万円程度の費用がかかることが多いかと思います。

20社以上ある退職代行業者を比較する

退職代行業者は20社以上ありますのでどの業者に依頼すればいいのか、判断に迷うところがあるかと思います。

そこで、代行業者の違いを比較するためのポイントを解説します。

運営主体の違い

退職代行サービスを提供している主体は、大きく分けると下記の3種類があります。

  • 株式会社
  • 弁護士
  • 弁護士以外の士業(社会保険労務士、行政書士)

運営主体が違うと、退職業者が「できる内容」が違ってきます。

できる内容の違い

退職の際に発生する可能性のある論点は、下記のとおりです。

  • 退職の申出の代行
  • 会社が退職を認めない場合の交渉
  • 退職日の交渉
  • 有給の申出の代行
  • 会社が有休の取得を認めない場合の交渉
  • 退職に必要な書類の授受(離職票等)
  • 業務の引継
  • 未払賃金・未払残業代の請求
  • パワハラ・セクハラを理由とする慰謝料請求

代行業者が上記の業務のうち、どこまでの内容を「代行」できるかは、代行業者の運営主体によって違ってきます。

運営主体によって、どこまでの「内容」を代行できるのか表にすると、下記のとおりです。
○:できる内容
×:できない内容(∵弁護士法72条違反(非弁行為)となるため)

株式会社 社会保険労務士
行政書士
弁護士
退職の申出の代行
会社が退職を認めない場合の交渉 × ×
退職日の交渉 × ×
有給の申出の代行
会社が有休取得を認めない場合の交渉 × ×
退職に必要な書類の授受
業務の引継 × × ×
未払賃金、未払残業代の請求 × × ○(※)
パワハラ・セクハラを理由とする慰謝料請求 × × ○(※)

※ただし、退職代行の料金とは別料金であることが多いです。

代行業者の運営主体によって「できる内容」が違ってくるのは、弁護士法72条によって、弁護士以外の者が他人の「法律事務」を行うことが「非弁行為」として禁止されているからです。

弁護士法72条によって禁止されている「非弁行為」の内容については、争いがあるところです。詳細は、別記事で解説したいと思います。

しかし、少なくとも、弁護士でない者が、退職の際の条件(退職日や有休の取得等)について会社と「交渉」することは「非弁行為」として禁止されていると考えるのが一般的です。

料金の違い

退職代行業者の料金の相場は、主に下記のとおりです。

5万円前後 運営主体は、株式会社、弁護士などが多いようです。
3万円前後 運営主体は、株式会社、行政書士などが多いようです。
1万円以下 運営主体は、個人事業者などが多いようです。

弁護士ではない退職代行業者に依頼した場合のリスクとは

弁護士ではない退職代行業者に依頼した場合のリスクは、主に3つあります。

一つ目のリスクは、非弁行為(弁護士法72条違反)と言われないようにするために、代行業者が会社と交渉をしてくれないリスクです。例えば、退職日や有休の取得について、会社に伝言は伝えてくれるとしても、会社が直ちには受け入れなかった場合には、交渉をしてくれないというリスクです。そうなると、会社が不合理な対応をしていたとしても、ぞれを受け入れざるを得ないことになりかねません。

二つ目のリスクは、代行業者が会社と交渉をしてくれるとしても、非弁行為(弁護士法72条違反)となってしまうリスクです。退職代行業者の行為が非弁行為となる場合、仮に、会社と合意がまとまっても、後日、その合意が無効であると会社から主張されるリスクがあります。例えば、代行業者を通して有休取得申請をしても、後になって、「代行業者からの有給の申請は非弁行為になるので無効である。よって、有給申請をしていないことになるので、無断欠勤となる。」と会社から主張されるリスクがあるということです。

 

二つ目のリスクは、会社が非弁行為を主張しなければ、リスクが実際には顕在化しません。ただ、会社が「無断欠勤したことになるので、懲戒解雇する」と言ってくる可能性もありますので(可能性は低いとは思いますが、0ではありません。)、注意は必要です。

 

三つ目のリスクは、会社が「退職代行は非弁行為になるので、代行業者とは交渉をしない。本人からの連絡しか受け付けない。」といってきた場合に、弁護士ではない代行業者は、それ以上何もできなくなってしまうリスクです。

確かに、退職に失敗した場合は、返金保証をしている代行業者も少なくないため、追加の費用は発生しないこともあるでしょう。しかし、一つ目の弁護士ではない代行業者が失敗した場合に、改めて退職代行をやっている弁護士を探して依頼するというのも、それなりの手間と負担がかかります。何より、会社は、「弁護士ではない代行業者を使ってきた」ということで不信感をもっている可能性もあり、解決のためのハードルが上がってしまうことは否めません。

退職代行業者の選び方のポイント

「安さ」を最優先にする場合

「安さ」を最優先にする場合は、3万円(又は1万円以下)の退職代行業者に依頼することを検討することになります。

この価格帯では、弁護士で退職代行サービスをしている事業者はあまりいないかと思いますので、弁護士ではない代行業者が「できる内容」には限界があります。

もちろん、弁護士ではない代行業者に依頼しても、特にトラブルが発生しないこともあるかと思います。

ただ、代行業者が退職の申出をした後に、会社とトラブルになった場合は、改めて弁護士に依頼する必要がある場合もあります。そうなると、費用が二重にかかることもあり、また、問題がこじれてしまっていますので、解決するためのハードルがあがる可能性があります。

ですので、弁護士ではない代行業者に依頼する場合には、一定程度のリスクがあることは理解しておいた方がよいかと思います。

「できる内容」を最優先にする場合

「できる内容」を最優先にする場合は、弁護士が行っている退職代行の利用を検討することになります。

弁護士が退職代行をしている場合は、3万円以下の料金ではやっていないことが多いので、費用がかかることは理解しておくべきです。

「納得」できる説明をしてくれるかどうか

代行業者であれば、どこに退職代行を依頼しても「同じ」なので、「料金」だけが違うというわけではありません。

会社との間のやりとりや交渉をするにあたっては、労働法に関する一定の知識・経験が必要です。また、依頼される方との間でのコミュニケーション能力も必要です。電話一本すれば、退職代行ができるというものではありません。

また、代行業者の中には、会社と交渉がまとまらなければ実現できないことについても、「確実にできる」と断定的な表現をして、過剰な宣伝(景品表示法でいうところの、優良誤認の不当表示)をしている業者もあります。

例えば、民法では、正社員の場合は退職の申出をした後、民法627条に基づく期間が経過した後に退職をすることができます。しかし、裏を返せば、退職の申出をした日に退職をすることは、民法上ではできません。そのため、退職の申出をした日に退職をするためには、会社と交渉をして話をまとめる必要があります。

しかし、代行業者の中には、「即日退職できます」という表現をしている業者もありますが、これは「過大広告」といえるでしょう。

もちろん、交渉の結果、即日退職できることもあるかと思います。しかし、それは「交渉の結果」であって、予め分かっている「確実」なものではありません。

これはあくまでも一例にすぎませんが、いいことばかりではなく、リスクもきちんと説明しているか、リスクが発生した場合の対応をどうするのかなどの説明があることも、「納得」のためには必要かと思います。

いずれにせよ、ホームページの内容や、問い合わせをした際の説明の内容などを踏まえて、「納得」のできる退職代行業者を選択することが重要です。